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豊田麻理子先生 寄稿文

最終更新日 [2018年10月18日]  

熊本赤十字病院内科 豊田麻理子先生 寄稿文

《会報59号「つなぐ」に寄稿していただきました。》

 現在、日本の慢性透析患者さんは32万人を超えています。それに対して腎移植は、増加
傾向にはあるものの年間1600件程度です。献腎移植の待機期間の長さから9割近くが生体
腎移植で、献腎移植数は伸び悩んでいるのが現状です。移植成績の向上はめざましく、新
しい免疫抑制剤や検査法の登場により、2006年以降の生体腎移植の1年生着率は97.8%、
5年生着率は92.8%、献腎移植の1年生着率は93.9%、5年生着率は83.9%まで上昇しま
した。ここでは最近の腎移植の傾向や問題点について紹介したいと思います。
1、高齢者、夫婦間移植の増加
現在、末期腎不全に至る患者さんは高齢化しており、透析導入の平均年齢は68 歳を超え
ています。移植においても、移植時60歳以上の患者さんが2割を占め、この年齢になる
と、ドナーの多くは配偶者です。最近はドナーの約半数を60歳以上が占め、高齢ドナー
の安全性を担保することも重要な課題です。これまでの報告では、術前に慎重な評価を
行えば高齢であっても移植のメリットは大きく、移植腎の生着率は若い人と変わらない
といわれています。しかし、高齢者の場合は、感染症や悪性腫瘍など、腎臓以外の合併
症によって移植腎を失う危険が高くなりますので注意は必要です。ドナー、レシピエン
トともに慎重な術前評価、手術そして術後の管理が必要ですが、移植によって透析を回
避し、ご夫婦でお互いを気遣いながらリタイア後の生活を楽しむことができるというこ
とは、移植が生活の質(QOL)にもたらす大きな恩恵の一つです。
2、血液型不適合移植の増加
夫婦間移植(非血縁者間)の増加もあり、現在血液型不適合移植は3割を超えていま
す。成績は血液型適合と比べてもほとんど変わりはありません。最近はリツキシマブ
という薬を使用することで、脾臓を取る必要もなくなりました。
3、透析未導入の腎移植(先行的腎移植)
移植前の透析期間が短いほど移植後の予後が良いことが報告され、最近は透析導入せ
ずに移植を受ける人が増えています。2016年は全国で3割が先行的腎移植で、当院で
も現在移植外来に相談に来る方の半数は透析未導入です。腎機能が完全に失われる前
に、腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)について知っておくことは、自分の
病気を理解し今後の治療を主体的に考えるうえでとても重要です。医療者側もすべて
の腎代替療法と情報を提供するタイミングについて認識をしておく必要があります。
4、長期生着にまつわる問題点、チーム医療
短期成績が向上する一方で、今後はいかに移植腎を長持ちさせるかが問題となってい
ます。長期生着を阻む要因としては、慢性拒絶反応の他、感染症や悪性腫瘍、血圧や
糖尿病などの生活習慣病があります。免疫抑制剤の飲み忘れは、すぐに拒絶反応はお
こしませんが、繰り返すうちに拒絶反応の原因となる抗体ができてしまう危険があり
ます。また、移植後は味覚の改善や免疫抑制剤の影響から食欲が増し、体重が大幅に
増える人も少なくありません。移植しても、腎機能は正常の半分以下(1個分)である
ことには変わりませんので、腎臓に負担をかけない生活を心がけてほしいと思います。
そのために、最近は医師、看護師のほかに、栄養士や薬剤師といった多職種がかかわ
るチーム医療が重要視されています。当院でもいろいろな職種がその専門性を生かし
て移植医療にかかわっています。患者さんとともにチーム一同一丸となって長期生着
をめざしてがんばっていきたいと考えています。
5、当院の今後の展望と取り組み
日本の献腎ドナー不足、待機期間の長さは大きな問題です。日本の大部分を占める生
体腎移植は、健康なドナーに侵襲を加える医療であり、本来望ましい形ではありませ
ん。献腎ドナーの増加のためには、一般人への移植の教育や普及をはじめ、システム
の改善や、行政のサポートなどが必要です。現在、米国留学を経験した山永医師が中
心となって、献腎移植啓発のための“熊本モデル”を立案し、その実施に向けて準備
中です。
6、熊本地震を経験して
私たちは一昨年前に熊本地震を経験しました。これまでの経験から、電気や水などイ
ンフラへの依存が高い透析患者さんは、“災害弱者”として迅速な対応ができるよう学
会や自治体を中心としてネットワークの構築が進められてきました。しかし、実際被
災してみると、その対応は非常に大変で、想定外のトラブルへの対処も必要でした。
その反面、当院通院中の移植患者さんの6割が何らかの被害を受けましたが、多くの
患者さんの腎機能は安定していました。その際、腎移植者の会でも安否確認などが行
われており、今後は災害時に病院と連携して、迅速な情報共有ができるようなシステ
ムを構築したいと考えています。服薬が中断しないようにすれば移植は災害に強い医
療であり、このことは、実際経験した私たちが、もっと発信していかなければならな
いと思います。

最後に、当院では1988年から腎移植を行っていますが、今年中には通算300例を達成
する予定です。このたび、移植を受けた患者さんやドナーの方へインタビューをまと
めた冊子を作成しました。この冊子を通じて、これから腎移植を考えられておられる
方々や実際経験した皆様のお力になれれば幸いです。

この情報に関するお問い合わせは
熊本県腎移植者の会 事務局
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